全日本ピアノeコンクール特別トークセッション 

全日本ピアノeコンクール特別トークセッション
「オンラインで広がるクラシック音楽市場の可能性」

梅雨入り直後の鎌倉。激しい雨が降りしきるなか、歴史ある建長寺の広間に4名のゲストをお迎えしました。
全日本ピアノeコンクールの審査員も務めるピアニストの坂本真由美さん、山田剛史さん、有吉亮治さん、そして日本テレビ「電波少年」でお馴染み、T部長こと土屋敏男さん。
全国規模のピアノオンラインコンクールの試み、コロナ禍を経て変化する私たちの暮らしと音楽業界、クラシック音楽市場の未来にいたるまで、それぞれの視点で本音を語ってもらいました。
公開中の映像と併せてお楽しみください。


♪♪♪♪♪

夏目真紀子(司会):今日は鎌倉の建長寺に皆さんにお越しいただきました。ありがとうございます。
古都鎌倉の雰囲気を感じられるような…梅雨入りしましたので外はあいにくの雨なんですけれども、こちらの建長寺にある釣り鐘、梵鐘は国宝にも指定されているということで、そんな歴史のある場所から、今日はピアノのみならず、クラシック音楽界の未来を皆さんと語り合っていけたらなと思っています。

 

土屋:格調高いですね。大丈夫ですかね。場所とジャンルとあれですが。私は呼ばれて大丈夫なのかという心配がありますけど、はい。

 

夏目:楽しくやれたらいいなと思ってます。ぜひよろしくお願いします。
全日本ピアノeコンクール、オンラインで行う全国規模のピアノコンクールということで、6月1日からエントリーが開始しまして、たくさんの方に注目をしていただいてるんですけれども、坂本さんは割と早い段階からこのコンクールのことをお聞きになっていたと思います。

 

坂本:はい。

 

夏目:率直にピアノのオンラインコンクール、どう思われましたか?

 

坂本:最初にお話をいただいた時に、ちょうどコロナの影響でいろんなイベントが中止に追い込まれているという状況で、他の日本で行われるコンクールももちろん、あとコンサートももちろん、いろんな音楽イベントが中止になっている時だったんですね。なので、このお話いただいた時に、素直にやらないよりやったほうがいいっていうふうに思ったのが第一印象で。

 

というのもやっぱり、ピアノをお稽古する身としては、誰かに聞いてもらう、誰かに見てもらうっていうことで、モチベーションを保って練習してるっていうところがあったりするので、それが全部なくなっちゃうと、じゃあ、私たちは何に向けて頑張ってるんだろうって思ってやめていってしまう人もいるかもしれないし。っていうことを考えると、やっぱりオンラインでもコンクールができるのであれば、ぜひぜひこれはやったほうがいいのではないか、というふうに私自身は思いました。

 

それで日本では確かにこういった形の、本選まで、最後のファイナルまでオンラインでやるっていうのは、今までたぶんなかったんですよ。けれども、海外では一応行われてきているものでもありますし、特に大きなコンクールでも予備予選、予選の前の予選ではビデオの審査っていうのは普通に行われているので、不可能ではないということもあって、そういう意味ではやらないよりやったほうがいいんじゃないですかっていうのが第一印象でした。

 

夏目:坂本さんと同じく、山田さん、有吉さんは今回審査員を務めていただきますけど、オンラインのピアノコンクールの審査員というのは、山田さんは初めてですか?

 

山田:そうですね。今回が初めてですね、はい。審査っていうこと自体も難しいんですけど、オンラインだと経験がないと分からないっていうのが私たちの率直なところだと思います。もちろん、応募される皆さんも分からないと思いますけど、私たちも分からない。けれども、その中でベストを尽くして、なるべく皆さんがやってることを掴みたいと思ってるし、大事なことを逃さないように審査したいなとは思っていますね。

 

夏目:有吉さんはいかがですか?

 

有吉:僕もインターネットで審査するということは初めてなんですけど、やっぱりこの時代にいろんなあり方があっていいんではないかっていう、自分自身そういう意見があって。コロナになったときに街が止まってしまう、そうしたときに、ふとしたところに些細な幸せがあるというか。例えばインターネットを見てて、僕は素人の人の一日の生活、そういったものを見たときに、あ、面白い、これはコロナではなかったら、もしかしたら面白くなかったのではないかなと思って。

 

そういうことを考えてるうちに、やっぱり“いろんなあり方”というものが、限りなく可能性を持っているということを考えると、ピアノのコンクールも、いろんなあり方があっていいんじゃないかなと思いました。

 

夏目:一方、土屋さんは、クラシック音楽はノータッチでこられたということですが。

 

土屋:はい。そうですね。小さいころにピアノに行かないかと誘ってくれる親もいなかったですし、そろばんはやりましたけど。娘は小学校の時にピアノは習ってましたけど、今はやめてしまってるという。

 

今回誘っていただいて、今おっしゃった、コロナという非常に特殊なことがあって、一般的に言っても、僕らの仕事の仕方もなるべくリモートワークしましょうという形になって、番組の会議みたいなのも、今まで全部集まってやってたんですけど、リモートでみんなやるようになったら、もう正直言って戻れないんですよね、これでいいじゃんと。何時にどこどこのサイトに入って全員でやる、このほうがかえってみんなが自由に意見が言えるし。オフィスに行くっていうことも、「あれ、今まで何でオフィスに行ってたんだっけ?」っていうぐらい。逆に言うと電車にもう乗りたくないから、移動時間もいらないからと。

 

いろんなものが、技術的には実はできたことなんですよね。できたことなんだけど、ある種無理にでもやらなきゃいけない状況になって、やっぱりこのほうが良かったんだって。元に戻りたくないねってことが、たくさん起きてるんだと思うんですよ。

 

メリットも出てきたということの中で、クラシック音楽っていうジャンル、コンクールっていうものが、これを契機に何か新しいもの、新しい視点なり、新しいアプローチなり、新しい教え方なり、逆にいうと今までタッチできていない人たちがタッチするようになる。
例えば、さっき言ったように僕の娘がクラシック音楽、ピアノ習ってましたけど。で、この前ある会議をやっててこの話をちょっとしたんですね。そうしたら、「実は私、昔ピアノをやってた」と。女性だと多いんですよね。もう何年もやってないけど、リモートワークになって家にいるようになって、もう一回ピアノをやってみたいんだという人も結構いるんですよね。そういう人たちがもう一回習うとか、じゃあコンクールに出てみようとか、そんなことになったらかえっていいことがたくさん起きるんじゃないかな、と。そんなお話が聞ければなと思って、今日は参加しました。

 

夏目:今おっしゃったように、本当に選択肢がまず広がったというのが、今回のこのコロナ禍で大きく私たちの生活の中での変化だったんじゃないかと思うんですけど、坂本さん、山田さん、有吉さんもレッスンなんかもオンラインでやったりしてるんですよね。実際いかがですか?

 

坂本:すごく難しいところはあって、1対1のいわゆる実技のピアノのレッスンをやってて、あとは30人とかのオンラインの座学の授業っていうのもやっているんですけど、別の学校で。全然違うんですよね。

 

1対1の実技のレッスンっていうのをオンラインでやる難しさっていうのは、たぶん先生方(山田、有吉両氏を見て)も感じてらっしゃると思うんですけど。音って空気が振動して伝わるものじゃないですか、そんなこと意識して音楽をやってるわけじゃないんですけれども、すごく繊細な部分を聞いて、生の音を聞いて今までやってきているので。これがデジタルになってしまって。もちろんネットの環境も人によって違うわけですし、難しいなって。特に音色を聞き分けるとか、ほんとに小さな音の表現のニュアンスを伝える、もしくは聞き取るっていうのが、まだまだ今の技術では難しいところはあるなと。

 

でも面白いなと思ったのは、副科のピアノ、音楽大学においてピアノを専門としていない人たち、お歌の人、あとは弦楽器の人、管楽器の人がピアノの単位を取らないといけないんですけど、学校にもよると思うんですけれども、私の生徒だからかもしれないですけれども、毎回来てなかったちょっと不真面目な、まあ真面目なんだけれどもちょっと具合悪くなりがちな子とかいるじゃないですか。オンラインだと絶対に来るんですよ、1分違わず。

 

また、一方で30人とかを相手にするオンラインのいわゆる座学の授業ですね、女子高なんですけれども、そちらは。高校生で女の子でっていうと、あんまり手が上がらないんですね、普段は。どう思う?って聞いても。ただ、チャットをオープンにして、自由にチャットで意見をくださいっていうと、ワーってくるんですよ。

 

だからオンラインで、新しいレッスン、新しい授業、新しい教育のあり方っていうのを広げることは、これからできるんじゃないかなっていう可能性を感じています。

 

土屋:昨日たまたまニュースで見ましたけれども、不登校の子どもたちが学校にオンライン授業だと出るし、それは続けられるっていうことがあったと。

 

そういう意味でいうと、裾野が広がるっていうんですかね。だから、1対1の非常に高いレベルのものには実はふさわしくない。最後のとこにはいけないのかもしれないけど、いろんなものの敷居を下げるっていう意味では、すごくこれはいいのかもしれないですよね。

 

山田:今の世代なんかはチャットでできるんですけど、私たちの世代だと難しいので、逆に今まで会議で“催しもの”で行ってた感じのものに、今度は「ZOOMになりました」っていう知らせがきて、一応申し込みは送ったんですけど、やっぱり気が乗らないから行かなかったっていうこともあったりするんで、世代によってアクセスしやすさってあると思うんですけど。

 

今の若い子たちはほんとにネットでアクセスできるんだったらそれは使ってもいいと思うし、新しいやり方っていうのはあってもいいのかなと思いますよね。それはでも私たちには分からないこともありますから、何年かやってみないと。

 

土屋:そうなんでしょうね。たぶん皆さんオンライン的な、デジタル的なというか、機械的なというか、テクノロジー的なことは、分かってたら音楽家になってないですもんね。

 

山田:そうですね。確かにそうです。笑

 

土屋:だから、そういうことが苦手な人が音楽家になるわけだから、そういうものに負荷をかけちゃいけないわけですよ。それは別の人間が、「もうこれでレッスンもすごく高いレベルでできますよ」っていうサポート体制みたいなものが必要な時代っていうか。会議やってると、ものすごくプツプツ切れてものすごく画質の悪い参加者も、画質がいい人も、一緒になってるからね。そういうのがある種、全部同じレベルになるようなサポートっていうのが大事な時代にもなってますよね。

 

夏目:そういう意味では、技術の進歩っていうのも、コロナを機にぐっと進んでいく可能性はありますよね。

 

土屋:でも、そういうものがよく分からなくてある種特化したとこにいるわけだから、そういうのどこに相談したらいいかも分からない状態があって。

 

でも例えば、さっきのレッスンの話だと、今まではどこで習おうか、物理的に近くじゃないといけないとか、わざわざ遠くまで行けない、みたいな人たちが、オンラインだと、この先生に習ってみたいってことができたりするっていうメリットもあるわけだから、極端にいえば、日本だけじゃなくて海外の先生のレッスンも受けられたりするわけだから、そういうことの道筋まで作ってあげる。

 

それからコンクールで、例えば、「そこ違うよ」って審査では言えないけど、オンラインなら「あー!」って言ったりすることができるわけじゃないですか。プレーヤーからすると、ここ間違えたってやっぱり気が付かれたとか。でも、ある先生は、そこのところすごくいいよって言ってくれる。そんなことが、プレーヤーにとっては後ですごくプラスになったりすると思うんですよね。

 

新しくできること、こうなったことによって開拓していくというか、そこにチャレンジをしていくってことは、音楽家の方じゃない別の人が、こんなことやってみましょう、こんなことやってみましょうって言うべきだっていう気はすごくします。

 

夏目:今回のコンクールもクラシック音楽どっぷりじゃないところで企画が立ち上がったわけですよね。そのアイデアと既存の今ある世界っていうのをどういうふうに融合させていくかっていうことですよね。さっき有吉さんはいろんなあり方があっていいんじゃないかっておっしゃいましたけど。

 

有吉:僕だけかもしれないですけど、音楽やってる人の原点って凝り性が、すごく一点のことに凝っていくところから始まるんだと思うんですけど、例えばそれが、ピアノのカタログだったり、小っちゃい頃はそういう感じだと思うんですけど。

 

このオンラインのコンクールについて、僕はとても期待できるんじゃないかなと思うことは、例えば撮り直しができる。今までのコンクールでは一発勝負。で、だめだった。で、諦める。で、ピアノから離れる。だったのが、撮り直しができることで、もっと美しいものが撮れるんではないかと繰り返しができることによって、自分の美意識が高まる。それはとても、小さい子どもさんにはすっごくいいんじゃないかなと僕は思います。

 

坂本:映像を自分で客観的に見れるので、ここをもうちょっとこうしてみよう、ここをもうちょっとこうしてみよう、先生に今こういうふうに言われたな、みたいなことを復習しながら、もっといいものを、もっといいものをっていう作品を出すことができる、それ自体が勉強になると思います。

 

夏目:ビデオ審査はこれまでもあったとおっしゃってましたけど、そのときにもそういうやり方はできたんですか?

 

坂本:そうです。いろんなやり方があると思うんですけど、私が出た審査というのは自分でビデオを録画して、それを送ってっていうことだったんですけれども。

 

当時は自分で簡単に、変な話、iPhoneとかタブレットみたいなので簡単に撮影してみたいなことがあんまりできなくて、私は大きいコンクール用は業者の人にわざわざ来てもらって、それでしっかりしたものを撮る。なので、あとであんまり見返したりっていうことが…何十年前かあまり言いたくないんですけど(笑)、簡単にはできなかったので、そこは今の時代の良さかなと思います。手元にあるスマートフォンで結構それなりのクオリティーが撮れるっていうのは、ほんとにいい時代だなって私は思ってます。

 

山田:“それなりのクオリティー”っていうのは、結構怖いことになりますよね。一回限りの外向きのものっていうのと普段着のファストファッションみたいなことっていうのは、また違ってきますから、どっちがいいのか分かんないですけど。

 

個人的に私はすごく録音・録画が苦手だったので、録音・録画が必要なコンクールは、私はことごとく通らなかったですから、その意味では今の時代、そういうのが苦手な方にとってはすごいつらいだろうなとは思うんですけどね。でも、逆にいうと普段の中で、私のときはそれこそ業者さんに一回撮ってもらって、直すこと、今でも直すことはできないですけど、でも、気軽に撮り直すことは当時やっぱりハードルは高かったので。場所を借りて録音するんですけど、その場所がうまく自分に合わないということもいっぱいありましたので、今は自分のお家でリラックスした環境で、ベストなものができるのであれば、だんだん良くなってくる。自分の個性っていうのがより良く出すことができるようになってるんじゃないかなとは思います。

 

なので、昔は自分の音を録っても、あまり録音の技術としていいなと思うことは少なかったんですけど、今かなりの確率で撮ったものがすごく良いように撮れることが多いので、その意味でも活用していただければ、それで何か自分のステップアップとかになれればいいんじゃないかなと思いますけどね。

 

夏目:スマートフォンとかタブレット、もう所有率は高いですからね。

 

土屋:ほぼ100%と言ってもいいでしょうね。

 

夏目:そういう意味ではもう録音・録画っていうのは手軽にできる行為っていうことになりますよね。

 

土屋:苦手だったっていうのは何かあるんですか?

 

山田:もうマイクとかカメラを前にすると、もう何をやっていいかわからない。

 

坂本:今まさにそういう状態ですね。笑

 

土屋:でもあれですよね。いわゆるライブで、ステージで弾くっていうことは大丈夫なんですか?

 

山田:それはいいんですけど、「あなたは間違えられません」っていうのが苦手でしたね。

 

坂本:試験とかは大丈夫なんですか?

 

山田:試験はべつに人生決まるわけじゃないですからね。

 

夏目:手軽に撮れるようになったことによって、発信をする人もほんとに増えましたよね。このコロナ禍でYouTubeを始めたって人も随分多くいると思うんですけど、ピアノ系YouTuberというジャンルのひとつも確立されています。登録者数も数十万人超える方もいらっしゃいますけど、そういう動画はご覧になったりしますか。有吉さんどうですか?

 

有吉:そうですね。僕はYouTubeは結構好きで、いろんなジャンルを観てるんですけど、あまり深くは観てないですけど。どういうことをしてる人がいるのかな?っていう感じで観ることはあります。

 

夏目:山田さんは?

 

山田:私はそういうわけで、そんなに録音・録画に興味がないんです。でも、オーケストラは観てるんですよね。オーケストラとかお笑いは観ます。でも、ピアノは観ないですね。

 

土屋:自分の専門だから観ないっていう。

 

山田:自分で音が出せるので、それを聴いているので。この曲を知らなかったので聴く、ということはありますけど、演奏自体をじっくりYouTubeで聴くっていうことはそんなにないですね。逆に長い時間観られないです、3分以上観られないと思うんですね。

 

夏目:一般の方にとっては、これまでピアノの演奏、あんまり身近じゃなかったなっていう人にとっても、YouTubeで手軽に観られるようになったっていう意味では、少し距離が縮まったのかなっていう気がするんですけど。

 

土屋:これだけ何万、何十万っていうYouTubeの中で、ピアノ系YouTuberを観るってことは、大体最初からピアノに興味があるって方たちだから、それをもっと自分でプレイするほうにまでもっていくような道筋ができるといいだろうし、そういう意味でいうと裾野が広がりますよね。

 

僕はやっぱり今回の審査でぜひやっていただきたいなと思うのは、さっきこれ始まる前にフィギアスケートの話をしていて。フィギアで採点はされるんだけど、解説が演技の最中に、これから見どころのジャンプがあるとか、これはすごいとかっていうのがある。そういう、聴いてる最中の先生方のコメントなり、例えば「おっ、良かった!」とか、そういうのってたぶんプレーヤーが後からそれを副音声なり一緒に聴くと、すごいプラスになるような気がするんですよね。先生によって違うっていうのもまたいいだろうし、それはこういうものだからこそできることとして、やっていただきたいなって気がしますけど。どうですか、そういうのは?

 

夏目:一応予定としては、本選では副音声的な形で審査員の一部の先生に解説をしていただこうという試みをしようという話にはなっているんですけれども。でも、審査員の先生方としてはどうなんでしょうね?

 

山田:パーツと、この曲のここが良かったから加点っていうことはできないんですよね、クラシック曲の場合は。逆になるべく深いところから見るようにして採点してると思うんですけど、全体聞かなくても最初の何秒かを聴いたら大体自分の中でこれぐらいっていうのは、音からは聞こえてくるとは思うんですけど、皆さん。でも、そこら辺の基準っていうのは長年勉強してきて審査員の先生方は持ってらっしゃることだと思うんですけど、一般には分かりにくいのは確かかもしれません。

 

でも、テレビでこの前、天ぷらが揚がるタイミングは音を聞けっていうのをやってましたけど、その音を聞くっていうのもやっぱり修行じゃないですか。そこら辺ですよね。その音が今の音ですってテレビで言っても、分かるかっていうとなかなか。でも、そういうものなのかなっていうのを“感じる”っていうのはありますよね。

 

土屋:理解の膨らみができるっていうか。そういう気がするんですよね。

 

山田:サジェスチョンでもそういうことが役立てられればいいのではないかなと思うんですけどね。

 

夏目:クラシック音楽界に全く触れずにきた人にとっては、確かにどこを聴きどころにしたらいいのかっていうことさえも分からなかったりするわけですから、そこをちょっとサポートしていただけると、こういうところをこういうふうにすればいいんだなっていう。

 

土屋:逆に言うと、それトータルで新しいコンテンツになっているというか、こういうところを見てるんだっていうこと自体が面白いというか。今の音はいいですねって、天ぷらの音と一緒にしたら失礼なんだろうけど(笑)。でも、「あ、いい音が出ました」っていう、「いいタッチでした」とかっていうこととか。そういうことによってすごく理解が、僕らみたいな素人には、こういうことなんだっていう、いい補助線が引かれる気がしますよね。

 

山田:そういう音はきっとライブじゃないとっていうことはあるとは思うんですけどね。オンラインでどこまで想像できるかっていうのは、それをなるべく想像するのも審査員の仕事かなと思いますね。

 

坂本:ただ、音楽ってスポーツと違うところは、スボーツだったら例えばラグビーとか、サッカーとか、フィギアスケートとか、解説員の方がいらっしゃって、私なんかも全くラグビーなんかはこないだのことがない限り観たことなかったんですけれども、詳細なルールの説明とかもしれくれるし、こういうとこ観たらいいんだ、この人今こういうふうにしたから上手なんだっていうのが分かるじゃないですか。

 

ただ、音楽ってルールとか加点するポイントっていうのも決まってるわけじゃないところもあって、審査員一人ひとり聴いてるところも大事にしてるところもそれぞれ違っていて、なのでそういう解説を付けることによって、審査員一人ひとり、いわゆるプロのピアニスト、もしくは教育者っていう人たちが、みんな同じところを実は聴いてるのではない、という楽しみもクラシック音楽ってあったりすると思うので、そこも見どころとして観ていただきたいなというふうに思いますね。

 

山田:流派として本当にいろいろあるから。それがマイナスっていうことじゃなくプラスになるように、こういう先生はこういう評価だけど、別の先生はこういう評価、っていうのがプラスに感じていただけるような形でね。

 

土屋:そこはすごい興味深いと思うんですよね。テレビなんかも普通に一般だと観てしまって、僕らは例えば評価するところって違うから、それを副音声にすると全然違うものになるんですよね。それがやっぱり理解を深めるという意味で、観るんですよね。映画なんかも、一緒に観ながら「今のあそこのカットはすごいよね」って言うと、あ、すごいんだ!と、豊かさが受け取れるっていうところはあるので、そういうのは面白そうだなと思うんですね。

 

夏目:ただ、審査員の先生たちにとっては、審査の様子もすべて見られるっていうところの緊張感もあるのではないかなと思うんですけど、いかがですか?

 

有吉:僕は教える立場になって思うことがあるんですけど、小っちゃい時に「音聴きなさい!」って先生とかに言われるんですよ。僕、いつも思ってた、「聴いてるし」と。聴いてるのに何で聴きなさいっていうの?っていうのがずっとあって。

 

聴くっていう行為はすごく難しいことで、ただ聴くんじゃなくて“イメージを持って”聴く。その副音声で解説を流すときに、例えば、先生によってスペシャルな音っていうのがそれぞれの曲にあると思うんですけど、この音には先生方がどんなイメージを持っているかっていうことを話して、その上で聴いてる人が想像すると面白いと思う。聴こえ方が違うんだろうな、と。オンラインでどのくらい伝わるかどうかは分からないですけど、でもオンラインでないと解説を聞くことはできないと思うので、その曲を、例えばコロナが落ち着いて普通の演奏会に行ったときに、ここはあの先生がこういうイメージで聴いてたとか、そういうのを演奏を聴きながら思ったりすることが、音楽がより身近になれるひとつの手段じゃないかなと思いますね。

 

夏目:確実に次につながっていくきっかけになりますよね。
今お話聞いてきて、ズバリ、クラシック音楽とオンラインっていうのは、相性的にはどうでしょう?

 

土屋:相性的には悪いと思いますね。当然オンラインとかそういうことを想定しないで作られているものだし、そういうことが分からないというか、あんまり興味のない人たちが音楽をやってるっていうことを含めて。ただ、それをサポートして、その楽しみ方みたいなものを今の人たちにつなげる。それは間違いなくすごく豊かなものがそこにある。触れずにおくにはすごくもったいない豊かなものがあるんだから、そこにアプローチ、というか触れるためのすごいチャンスになるんじゃないかっていう気がしますね。だから、それは周りがつなげるだけのシステムなり、入口なりをどうつくるかってことが大事だと思います。

 

夏目:今回のコンクールはそのシステムに?

 

土屋:それができるかどうかが勝負どころでしょうね。主催者の高木さんのね。それができなかったら、もうバカなんじゃないのっていうことになるでしょうし。

 

一同:(笑)

 

夏目:プレッシャーが今かかりました。

 

土屋:ええ。できたらすごいことにっていうか、そうか、そういうつなぎ方をしたら、この豊かなものにみんながタッチしやすくなるんだという、すごいところにいるんだと思いますね。

 

夏目:これまではコンクールっていうのは、リアル審査してこそっていう空気感があったわけですよね。だからこそ閉鎖的でもあったわけですし。でも、そこの敷居がぐっと下がるっていうことで、ほんとに触れやすくなりますよね。

 

坂本:今までコンクールっていうと、何となく密室の中で審査員数名が集まって、何だかよく分かんないけど1位この人でした、2位この人でした、結果を見て「この人が1位なんだ」「へー、この人が2位なんだ」って結果だけを見せられてたわけですけれども、今回は、オンラインで審査をしているその中身だったりとか、みんながどんな点数を付けてっていうことまでも公開される。どういう審査が行われているかっていう、その過程を見られることによって、コンクールっていうものが違った意味で面白いジャンルとして、もしかしたら発展することができるんじゃないかなというふうにも思っていて。

 

オンラインとクラシックの親和性っていうことなんですけれども、オンラインのいいところって、世界中に発信できることだと思うんです。テレビも発信できると思うんですけど、より簡単に、より…

 

土屋:国境を越える。

 

坂本:越えると思うんです。クラシック音楽ももともと国境を越える、言葉がなくても伝わるものなので、私は意外と近寄れるんじゃないかっていうふうに、うまく使えば、ですけれども。また、私たちが今までやってきたものとは違う、別ジャンルになるとは思うんですけれども、別ジャンルの新しいエンターテイメントとしての形がオンラインとクラシック音楽の融合によって、生まれることはできると思っています。

 

土屋:例えば、ウイーンに留学して勉強中の大学生がエントリーできるわけですもんね。普通だったら帰ってきてしなきゃいけないけど、自宅でエントリーができるし。お父さんについて今アフリカのどっかに駐在している小学校の女の子だってエントリーできる。そういうことはあったら楽しいですよね。せっかく国境を越えられるというか、時空を超えられるわけだから。

 

山田:音質の問題だけクリアになれば、それだけですよね。

 

土屋:そうですね。

 

山田:いい音で撮れてっていうそれだけがクリアになればある程度いいんじゃないですかね。平等性ですよね。誰々さんはうまく音が入らないっていうことの不平等はまだあると思うんですけど、でも、そこさえクリアできれば自分のベストを尽くせばいいですよね。

 

土屋:通信環境と撮るための機材ですね。そこはちゃんとサポートをしてあげないと。少なくとも本選近いところっていうのはやってあげないといけないですよね。

 

山田:でも、予選の段階では皆さんいろんな環境があると思うんですけど、なるべく観るようにはしたいと思いますけどね。電子ピアノだから良くないっていうことは思ってないですし、電子ピアノでも普通のピアノと同じように弾けば、ちゃんと同じような音が鳴りますから。

 

夏目:送られてきたその動画の中で。

 

山田:はい。

 

夏目:有吉さんはどうお感じになりますか?

 

有吉:ちょっとふざけてるような答えになっちゃうかもしれないんですけど…送られてきたものを聴いて、やっぱりこっちも楽しみたい。それで例えば、「私はクラシック音楽をやるその当時を再現して弾きたい」とか、バッハだったらこういうカツラをかぶってとか、昔の衣装を着てバッハを弾くとか、そういった面白さっていうのも、もしかしてあったりするのかなって。一般的な一発勝負のコンクールでは、それは出てきただけでふざけてるって取られると思うんですけど、その人が自分のアイデアとか個性をその動画に盛り込む。演奏だけじゃなくて周りに凝るとか、そういったものももしかしてあったりするのかなって。それはちょっと面白いかなって。

 

夏目:見え方も含めてひとつの作品ってことですね。

 

有吉:そうですね。

 

土屋:普段着ジャンルみたいなね。コックさんが普段のコックさんの服装でやるとか、家族が周りで見守ってるとか。お父さん頑張れ、から始まって。

 

山田:皆さんクラシックってすごい高尚なものって思ってらっしゃるかもしれないし、発表会ってきれいな服を着て弾かないと、舞台に行かないといけないと思ってらっしゃるかもしれないですけど、審査員側としてはべつにそういうことを求めてるわけでは全然なくて、ちゃんと音楽してほしいって思ってます。

 

正しい音を弾けばいい時代では全くないので、もうそんなものは100年やってきたわけですよ。正しい音を1音間違わずピアノ弾いたところで、誰にも届かないレベルなわけですよ、そういう人はいっぱいいるので。それだけにピアノで表現することは難しいですけど、ピアノを超えて何か表現するものを持ってるってことがすごく大事になってくると思います。

 

YouTubeの動画を通してっていうこともそうですけど、動画をつくるっていうよりも、動画をつくるための自分の何か欲求、湧き起こるものっていうものをなるべく見たいと思ってますし、そういうものは画面から伝わりますから。なるべくちゃんとしなきゃって思わないで自由にやったものっていうのがやっぱり面白いなと思いますね。

 

夏目:画面から伝わるって言葉がありましたけど、土屋さん。

 

土屋:ほんとそうだと思います。今まではコンクールっていうのは、小っちゃい子も含めて、それ用に一張羅を買って、出てきてお辞儀してっていうことまで練習して、すごい緊張して。それはそれでもちろんその良さはあったんでしょうけど、そうではない音楽の、逆にいうと本質的なことへのアプローチのチャンスになるかもしれないですよね。楽しむとかそういうことも含めて、という可能性は感じますね。

 

夏目:冒頭の土屋さんのお話の中で、しばらくピアノをやってなかったけれども、このコロナ禍でステイホーム中にまたピアノに触れる機会があって、また楽しめるようになったという人もいる。私、「駅ピアノ」とか「空港ピアノ」っていう番組が好きなんですけれども、海外の様子なんか見てると、ほんとにさまざまな職業だったり、立場、年齢層の人たち、老若男女が、独学で勉強してきた、ちゃんと学んできたって人もいるんだけれども、ほんとにサラッと、あくまでもピアノを弾くっていうことを楽しみに来てるんですよね。そういう様子を見ると、ピアノというものが身近だったリ、音楽が生活の中に普通にあるんだろうなって思うんですけど、さっき山田さんのお話にあったようにピアノってすごく高尚なものっていうのが…

 

山田:そういう自然なものを潰してきたのかもしれないですね。それはそうならないようにって思いますね。

 

夏目:今から変えられますかね?

 

土屋:このことはすごくチャンスになってるかもしれないですね。家にいる時間が長くなって、でも、この機会に僕いろんな芸人さんが実はピアノを家で習い始めてるとか、部屋で練習し始めてるっていうの、すごいたくさん聞くんですよ。その昔でいうと、ビートたけしさんがもう何十年前、僕が一緒に番組をやってたころだから、30年ぐらい前にいろんなことを勉強する中でピアノの練習を定期的にしてたんですよね。練習する甲斐というか、目標というのが、ピアノってすごくあるんだと思うし、それは60でも70でも、今からでも1曲を弾くことを目標にやることって、とっても楽しいことだしっていうことが、延長線上にあったらすごく素敵だと思うし。

 

夏目:ピアノって最初はバイエルに始まって、段階踏まないといけないみたいな。

 

土屋:小学校で始めないと、あとはもう全員乗り遅れみたいな感じがあるじゃないですか。

 

夏目:でも、好きな曲から始めたっていいわけですよね。その決まりはない?

 

坂本:先生的な立場からいうと基礎はちゃんとやりましょうっていう話はあるかもしれませんけど。でも楽しむことが一番ですからね。楽しむ気持ちを育てる、楽しむ気持ちを保っていられるっていうお勉強の仕方はしたいですね。

 

山田:基礎っていうものは難しい言葉で、指が動けば基礎っていうことでもないので。正しい音を聴く、耳の基礎っていうのもありますから。それを先生がいい段階で、楽しめる程度でうまくやるっていうのがいいんじゃないかと思いますけどね。

 

土屋:今オンラインレッスンっていうのはかなりやってるんですか?

 

坂本:大学の話をすると、前期はもうずっとオンラインが決まったりしているんです、9月末まで。

 

土屋:たぶん、さっきみたいな、今まで全くやってなかったけど、たけしさんみたいな人がオンラインレッスンしてほしいんだっていうと、そういうレベルのものはあるんですか?

 

山田:そこまで対応できるような人は、まだカリキュラムとしてないかもしれないですけど。大変でしょうね。ただでさえオンラインのためにやって、カリキュラムにするのは大変で苦労されていると思うんですけど。

 

土屋:何年ぶりにとか何十年ぶりにピアノをしたいけど、いろんな人たちの、いろんなレベルがもちろんあるんでしょうけど、それがつながり続けると、いいとこにつながると。

 

坂本:今後そういうあり方も広がってくのかなと思うんですね。やっぱりピアノのレッスン、準備して電車に乗って行って、っていう時間がみんなあるわけじゃないので。お家からレッスンができるっていう状況が、技術がもう少し進化してほしいなというふうには思いますけどね。今後そういうレッスンのあり方っていうのも広がっていくのかなって。あと海外の先生から、気軽にわざわざ飛行機乗ってヨーロッパに行かなくても、さわりの感じかもしれないですけれども、ちょっとどんな感じかファーストインプレッションみたいな感じでレッスンできるかもしれないですし、どういう広がりがあるのかなっていうのは、私もすごく楽しみです。

 

土屋:そうですよね。海外で有名な人がオンラインレッスンを、例えば何千ドルとかって、特別に何人やりますよみたいなことが世界中に伝わって、それだってオンラインレッスンだったらあり得るわけですよね。

 

山田:それはそれでビジネスになる。

 

坂本:面白いかもしれない。笑

 

山田:でも、レッスンを受けるだけでなくて、そこで過ごすことも。

 

坂本:作曲家が生まれ育ったところの空気をよく感じてみてください、みたいなね。

 

山田:悠長な話ですけど、でもなんでしょうね、細胞レベルで感じるってことも確かにはありますよね。

 

夏目:それはリアルな場だからこそできること。

 

山田:そうですね。べつに誰々先生が何を言ってたってことも思い出しますけど、どこどこで食べたパンが硬かったとかのほうが思い出しますよね。

 

一同:(笑)

 

山田:そこで見たものっていうのが。でも、小っちゃい子でもコロナで大変なときに、ピアノ弾いてる時だけが幸せだったっていう子もいましたし、実際ピアニストの方たちもそうだったと思います。もちろん、コンサートができないことはつらかったと思いますけど、自分のためにピアノを弾いている時間っていうのはすごく豊かなものだったので、いろんな方がピアノを始めたっていうのはすごく理解はできるものだと思いますね。自分の中で育てられることですよね、ピアノ弾くっていうのはね。

 

夏目:日本では小学生のうちでピアノ習ってる子が人口としてはすごく多いにもかかわらず、なかなか中学生以降も続ける人が少ないっていう話も聞きますけれども、その続けるきっかけにもなるかもしれないですよね。

 

山田:そうですよね。

 

土屋:だから、スタートラインにはすごくたくさん、何十万人たぶんいるんだけれども、ただイメージ的にいうとプロの今でもやってる人に向かって、ずっと脱落してく歴史みたいな感じがあるんだけど、ほんとは音楽っていうものの中でいうと、いかに一生楽しむかっていうことが本線だとすれば、いつでも戻ってこられる道っていうか、そういうものが用意できるといいかもしれないですよね。

 

坂本:ピアノを続けて、みんながもちろん音楽家になるわけでもなくて、ピアノの先生になるわけでもなく、ただただ音楽を、ピアノだったらピアノを人生の財産として、ずっと持ち続けてもらえればいいなというふうに思っているので、いつ帰ってきてももちろんいいですし、いつまた手放してもいいしっていうふうに思ってます。

 

土屋:“何十年ぶり部門”とかつくってほしいですね。

 

一同:(笑)

 

土屋:小学校の時に3年やったんだけど、もう40年やってませんみたいな人の部門とかっていうのがあると帰ってきやすいかも。

 

夏目:しやすいですよね。やってみようかなと。

 

土屋:そうそう。この主催者の高木とかね。

 

一同:(笑)

 

夏目:まさに。そうですね。

 

土屋:そういう人多いわけじゃない。小学校3年間だけやりましたみたいな。

 

夏目:今回のコンクールは、コロナ禍で目標をちょっと見失ってしまった人たちの少しでも励みになればっていう思いもあるんですけど、その一方で一般のこれまで触れてこなかった人たちにも気軽に楽しんでもらいたいという趣旨もあるわけなんですが、有吉さんもヨーロッパとか中東でも演奏活動をされていて、聴く人たちの姿勢とか耳とか、各国で違いはありますか?

 

有吉:ピアノを分からない人が、演奏会終わってピアノの周りに集まるんです。で、あそこのここ弾いてとかって。

 

夏目:ステージ上で?

 

有吉:そうなんです。面白いでしょ。楽譜も分からないけど、楽譜見てここ弾いてって。それがすごく面白くて、音楽っていうものがあんまり届いてないけど、すごく興味があって、すごく身近に感じたかったんじゃないかなと思いました。

 

夏目:逆にもっと距離を感じている国の人たちも、もちろんいるっていうことですよね。日本ではピアノっていう楽器は、ほぼ皆さん知ってますよね。

 

坂本:それも不思議ですよね。だって私たち日本人が、西洋で300年前ぐらいに生まれた音楽、楽器を演奏しているわけですから。

 

一回それ考えたことあるんですよ。っていうのはイギリスでコンクール受けたときに現地のイギリス人の方に「君、日本人で、何で西洋の音楽を、こんなに頑張ってピアノやってるの?」みたいなこと言われて、その時すごい考えちゃって、まだ学生だったんですけれども。でも、クラシック音楽の良さって、じゃあ何なのかなって。いろんなジャンルがあるじゃないですか。
いろんな民族で、いろんな音楽が成熟しているわけで、その中のクラシック音楽っていってる西洋音楽って、ある一部の音楽だと思うんですけれども、何でこんなにも私は好きなんだろう?何でこんなに日本で広がったのかな?なんて思ったときに、クラシック音楽の良さって、聴いてる人、弾いてる人に結構たくさんの可能性が…他の音楽はないって言ってるわけじゃないんですけど、いろんなことをイメージしやすいのかなって思ったりもしていて。弾いてる人、聴いてる人にいろんな可能性を渡すことができる音楽のジャンルのひとつなのかな。だから、こんなに私は夢中になってずっとやっていけることができるのかな、なんて思ったりもしました。

 

夏目:さきほど土屋さんおっしゃった振り落とされるっていうんじゃなくて、ほんとはもっと大きな器の中にあるものっていうことですよね。

 

坂本:なので、ヨルダンの方が興味を持ったりとか、あと、震災の後とかにクラシック音楽、求められたりもしたんですね。それはやっぱり聴く人にひとつのイメージを、これをイメージしなさいではなくて、いろんなことをイメージできるっていう音楽だったからなのかなと私は個人的には思っていて、なので、コンクールの話に戻るんですけれども、いろんな演奏があっていいし、いろんな審査員によってイメージもいっぱいあるわけで、それがクラシックの良さなのかなっていうふうに思います。

 

夏目:土屋さん大きく頷いてらっしゃいますが。

 

土屋:いや、そうなんだろうなと思いますね。他の音楽ってやっぱり歌詞があって、曲があって、伝えることってもちろん多様ではあるんだけど、ある種こういうものを伝えたいということがはっきりしてるわけですよね。他の民族音楽なんかでも、例えばこういう時に奏でる、みんなで歌う、音楽であるっていう割とはっきりとした目的みたいなものとかいうものがあるんだと思うんですよね。

 

それに対してクラシックって、言葉が見つけにくいですけど、豊かというか多面性があるというか、ですからそれを演奏するほうもいろんな演奏の仕方があるし、それを聴くほうもいろんな聴き方がある。そこがやっぱりクラシックというものなんだと思うので、それはすごく分かりましたね。それに触れるっていうことの、いつまでたってもひょっとしたら触っている誰かでしかないのかもしれないけど、でも触るたびに違うものに思えるぐらいの大きさみたいなものが魅力なのかなと思いました。

 

夏目:山田さん、いかがですか?

 

山田:私にとってピアノを弾いて、「ピアノじゃないみたいに聞こえる」っていうのが 褒め言葉なんですけど、べつにピアノじゃなくたっていいわけなんですけど、お客さまから「ピアノの音が一番癒されるんです」っていう話は、よく聞きますね。寝る前にピアノの音を聴くんですっていう、ピアノの音自体に魅力っていうのがすごくあると思います。

 

それと同時に、ピアノを勉強するんじゃなくて、ピアノを通していろんなことが知れるんですよね。国のことも知れるし、時代のことも知れるし。なぜベートーヴェンがこういう音楽になったのかっていうのは、音楽をやってできてきたものではなくて、もっと時代の流れみたいのが重なり合ってできたものなので、多面的にピアノを通して学ぶことができます。

 

私たちピアノ教師はそこのところを見せるのが仕事なんですけれども、なので、ピアノが全てと思わないんです。ピアノの裏に、曲の裏に何があるかとか、すごい原始的なものですから高尚なことでもないですし、ただ、そこら辺をうまく見るっていうのはなかなか、そういう先生も少ないなと思いますけどね。私はそういう先生に巡り合ったので楽しく続けてきましたけど、身近にそういう信頼できる音楽家がいるとやっぱり面白いなと思いますね。

 

夏目:山田さんと有吉さんは先生が一緒だっていうお話をお聞きしましたけれども、いい指導者とか、合う指導者に出会うっていうことも、そういうことにつながってきますよね。

 

山田:相性はとてもありますよね。教えるほうでもやっぱり生徒との相性は感じることはありますし。

 

夏目:有吉さんはどうですか?

 

有吉:僕はもちろん、その巡り合いはすごく良かったと。でも、僕はどういう先生に習っても、自分が合う合わないっていうよりも、自分が先生から吸収できることを見つけることがとても重要じゃないかなと思いますね。合う合わないっていうと、プラスとマイナスみたいな感じなんですけど、そうではなくて、もしかしたら合わないかもしれないけど、その合わない中でも何か自分が吸収できるっていうことが、やっぱり必要じゃないかなとも思いますね。

 

夏目:合う合わないっていうところでいくと、さっきクラシック音楽とWebの相性は悪いっておっしゃいましたけど。

 

土屋:本来はね。例えばカラオケって今行くと、100点に対して何点っていうようなのあるじゃないですか。正解のレベルがあって、最終的に何点と。ピアノもやろうと思ったらたぶんできるんですよね。ある弾き方を100点にして、それに対してずれたら何点減点みたいな形って。そういうものはあるんですか?まだないの?

 

坂本:音のミスをしたらバツが点くというようなソフトみたいなのはあると思うんですけど、それはいわゆるゲームセンターにある太鼓の達人なんか、ああいうのと同じジャンルなのかなと思っていて、音楽の本質ではないですよね。ただ、そういう楽しみ方も一部あるのかなっていう気はしています。

 

土屋:なるほど。だからレッスンのひとつとして”間違わない”を目指すとすると、あなたはこことこことここを間違いましたよって、終わったあとにプリント渡される、みたいなことは悪くはない?

 

坂本:あんまり…

 

山田:間違えても芸術的な間違いだったらっていうことはあるかもしれないですけど。

 

土屋:それはそうですね。本質的にはそういうことですよね。

 

この前、別のところで、あるテクノロジーの研究所の人たちと話したときに、ピアノがある回のある人の演奏、弾いたことを全部記録できる。例えば、強さとか、何秒タッチしていたとか、みたいなことまで含めて全部記録できるんです、と。それを完全にそのとおりに再現することができる。だから、ある有名なピアニストの演奏を、このピアノで再現しますっていうことは、記録としてはもうデータとしてはできるって言ってましたね。

 

坂本:ドイツの音大を日本と中国から受験したって、そのピアノを使ってですね。数週間前だと思うんですけれども、ありました。

 

土屋:へー。どうやってやるんですか?

 

坂本:ヤマハの「Disklavier(ディスクラビア)」というピアノなんですけれども、ドイツの音大に1台あって、日本の会場、中国の会場にも1台ずつあって、受験生が弾きます。それがインターネットを通して向こうのピアノにデータとして送られます。そこで演奏されます。自動演奏ピアノみたいな感じで演奏されます。で、そこに審査員がいて審査しますっていう形です。

 

夏目:本人はそこの場に行かなくても、でも本人が演奏したままの演奏をリアルで審査できるっていう意味ですか?

 

坂本:それが本当にリアルかどうかっていうのは分からないですけれども。ただ、技術っていう面では、それが今は可能にはなりつつあるんでしょうね。

 

山田:でも、その巨匠ピアニストが一回弾いたっていうのは、よく弾いたか分からないですもんね。ベストだったかどうか。ただ記録という意味では、私たちだって昔の100年前のピアニストがどう弾いていたかって、今でも記録としてCDとかロールピアノって参考にするので、参考にはなりますよね。

 

夏目:後世に残すものとしては、ということですね。

 

土屋:ロールピアノっていうのはオルゴールみたいに入ってるものっていうことですか?

 

山田:そうですね。それでも結構分かりますよね。そうそうたる作曲家が。

 

夏目:残してるんですね。

 

土屋:あるレベルまでいくけど、最終的な感情表現というか、そこにある、音楽的にいうとグルーブみたいなこといいますけど、それはないんだと信じたいですよね。

 

坂本:そこにいるオーラだったりとか、圧力みたいなものだったりとかっていうのは、やっぱりそこにはないですよね。

 

土屋:今AIがテレビ番組をつくったりとか、スポーツ中継ってほぼもうAIができるっていわれてるんですよね。ピッチャーが投げて、打ったらこのカメラに切り替えて、捕るところにカメラが行って、打たれたらピッチャーに切り返してっていうのは、ある種できるっていうふうにいわれてるんですね。あとはこのシーンを、小津監督、小津安二郎っぽく撮る、みたいなことも今AIで開発されているので。

 

でも、僕らはやっぱり映像の人間からすると、新しいゼロからイチは生み出せないでしょ、と。らしいものはつくれるかもしれないけどってことを信じられるからやってられるっていうこともあるんですけどね。そこで勝負することのために、デジタルでできること、テクノロジーでできることを極限まで上げてきてくれっていう気分にもなりますよね。

 

山田:そういうのはやっぱり、突き詰めるよりも突き詰めないほうがいいものができたりっていうこともありますか?機械とかAIとか。

 

土屋:そうですね。らしいものは、らしいもので。一般の人が見たらそれっぽいねってあれなんだけど、本質的に人間が人間に対して今伝えることっていうのはできないでしょ?ってことは確認できる気がするんですよ。

 

山田:やっぱりレコードっていうのはアナログだったですけど、それをCDとかデータにすることによってらしくなったんだけれども、らしくないっていうことが出てきてると思うので、逆にそれによって音楽家の皆さん窮屈になったりするのがあると思うんですよね。昔のロールピアノとかのほうが、たぶん作曲家の皆さんはあまり考えないで自然に弾けて、それでその自然さが出てきてたと思うんですけど、逆にすべてが聞こえるっていう緊張感の中で弾くことで、自由じゃないものが出てくるっていう場合があって、たぶんそれが音楽とWebの相性というか、相性の悪いところにあるのかもしれないですよね。そこにある程度曖昧な部分っていうのが出てくると楽ですよね。

 

夏目:すべてが伝わってしまうことのデメリット…と。皆さんからいろいろお話を伺ってきましたけれども、全日本ピアノeコンクール、改めて土屋さんどうでしょう。うまくいきますかね?

 

土屋:本質的には音楽的の豊かさだと思うんですよね。本来クラシック音楽の豊かさみたいなものを伝えるとか、それにタッチできるとか、それから自分がやってみようと思うみたいなことの、広がりの中で、うまくこの機会を使って、いろんなものにチャレンジをして、参加した人がそのことに対していろんな補助線が引かれることによって、良かったって思えるようになってくれるといいな、というふうに節に思っていることでございます。

 

夏目:一人でも多くの方に楽しんでいただけたらいいですね。ありがとうございました。

 

♪♪♪♪♪

時折笑いも起きるなか、和やかに、でもあっという間に時間が過ぎていきました。オンラインで広がるクラシック音楽市場の可能性、その未来に明るい希望を感じられるひと時でした。

 

さて、3名のピアニストの皆さんと、土屋さんは今回が初対面でしたが、本番スタート前から話が盛り上がっていました。一部を番外編としてお届けします。

 

演奏時の姿勢の影響でヴァイオリニストは顎が外れやすいという話題から…

 

♪♪♪♪♪

山田:物食べてる時あご外れたり。自分で治すの。

 

坂本:えー! そんな、すごい。

 

山田:職業病です。

 

坂本:えー。

 

夏目:ヴァイオリンは…これは挟まないと安定しないっていう?

 

山田:力、入るところがないんです。

 

有吉:バロックだったら置くだけみたいな。

 

山田:そうだね。

 

夏目:ん?

 

山田:バロックの古いバイオリンだとあんまり挟まない。

 

坂本:ちょっと大きめだったりして。

 

夏目:そうなんですか。

 

山田:その代わりそんなに難しいことやらない。

 

坂本:うんうん。

 

土屋:楽器に職業病ってあるんですか?

 

有吉:いろいろありますね。

 

坂本:そうですね。チェロの人は痔になりやすいとか聞いたことありますけど(笑)

 

一同:(笑)

 

土屋:へー。

 

坂本:こうやってやるんで(演奏姿勢の模写)。あとはなんですかね?

 

山田:あんまり聞かないですね。

 

坂本:管の人がアル中が多いとか。それは別の理由ですね。

 

一同:(笑)

 

夏目:何でだろう?

 

高木:皆さん、何となく趣旨は大丈夫ですか?

 

坂本:結構いい感じで今お話が終わったので。

 

夏目:すいません。終わったので。

 

高木:短いですね。ネタ切れですか?

 

坂本:いえいえ、そんなことないです。これからです。

 

土屋:楽しい方がいいの?

 

高木:楽しい方が。土屋さんはクラシックとバロックと。

 

土屋:まったく。

 

高木:まったく。

 

土屋:まったく、付け焼刃もしないできましたから。

 

高木:付け焼刃もしない。

 

坂本:テレビ業界、メディアのことを全然知らない取り残された人たちなので、むしろ教えていただきたいようなこと。

 

高木:どういう印象があるんですか? クラシックに。

 

土屋:不思議なもんだなとは思うよね。文学とか映画とか他のジャンルの中にないっちゃないじゃないですか。例えば文学の中でいうと、ギリシャ神話とか、そういうことなのかというと、そういうことでもないし、音楽っていう広い中にクラシックという別のジャンルがあって、それが現代にも新しいクラシックがつくられてるわけじゃないですか。っていうのが、他のジャンルにあまりないんですよね。

 

文学の中で、例えばギリシャ文学みたいなのがあって、今でもそのジャンルがあるかっていうと、やっぱりないわけで、そう考えると映画にもないし、本来の芸術っていうジャンルの中でいうと、だから例えば絵画でいうと何になるのか、というのもないじゃないですか。

 

坂本:そうですよね。

 

高木:音楽の中のクラシックっていうことですか?

 

土屋:というか、表現物としてひとつの音楽という中にクラシック音楽っていうジャンルがあって、それは今でも確たるものとして別にあるじゃない。現代のロックミュージックみたいなもののように、音楽ジャンルの中に。でもそれって絵の中で、例えば美術の中で現代美術っていうのもちろんあるけど、クラシック美術ってないじゃない。仏教絵画っていうのはあるけど、それは今でもあるかっていうとないわけで。

 

高木:うーん。

 

土屋:考えると不思議な立ち位置というか。

 

山田:その中で優劣をつけるっていうのも珍しいですよね。

 

高木:何となく僕も小学校の時にピアノを習ってたんですよ。

 

土屋:そこにべつに興味はない。お前が何をしようが。

 

山田:いやいや…笑

 

高木:3年ぐらいやってたんですよ。妻に言ったら、そんなこと誰にも言うなっていわれて。ちょっと習ってたんですけど。

 

僕計算したの。クラスで何人ぐらいピアノ習ってたやついたかな、と。昭和の僕らぐらいの年代って、子どもの頃習ってた人口ってたぶん一番ピークなんじゃないかなっていうぐらい習ってたんですよね。それを掛け算していくと、今ちょっと減少したと思うんですけど、子どもも少なくなって。小学校、僕が計算したら45万人ぐらい、小学生で。野球とかサッカーってどのぐらい習ってるのかっていうと、野球で18万人ぐらい。サッカーで25万人ぐらい。ピアノは四十数万人習ってるんですよ。

 

このポテンシャルや。だから、それだけ興味関心が強いわけですよ、子どもに音楽を習わせよう。だけど、大人になってその人たちがピアノに関心があるかっていうとほとんどないっていうか、関心がっていうかもう触れられないっていう感じですよね。僕の妻もちょっとピアノやってた時期がありまして、「もう、人の前で私ピアノやってたなんて言えない」。音大出てるんですよ。この方々(3人の皆さん)にそんなこと言えないんですけども。それでも、私がピアノやってたなんて人に言えないっていうわけですよ。

 

土屋:独特の階層というか。

 

高木:そうそう。そうなんですよ。僕がたぶん一番人に「ピアノやってる」って言ってるんですよ。

 

一同:(笑)

 

高木:ほんとに。まあ、ほんとそれぐらい一言でいうと、浅はかな言葉じゃちょっとあれなんですけれども、いかにクラシックのポテンシャルを引き延ばして。中学生になると一気にピアノ人口って減りますよね。やっぱりいろんな優先順位の中でもう排除されていくっていうか。それって、僕が3年間ピアノやってても1曲もピアノ弾けないっていうとこにつながっていくわけなんですけど。だから何も理解しない。

 

つまり、これって教える側にも問題があるんじゃないかなって思ってて。親が音楽を好きになってもらいたいからピアノ習わせてるのに、好きになるっていうところから遠ざかっていくわけですよ。ピンポンダッシュで先生のとこ行って帰ってくるんだから。いなかったから、みたいな感じで。ほんとにそんな感じで。

 

山田:でも、自分から習ってみたいと思ったんですか?

 

高木:いや、違うんですよ。うちの母ちゃんが小学校の音楽の先生だったんです。

 

山田:はいはい。

 

高木:ピアノも弾けないのに。そういう感じで子どもには一通りの教育をみたいな感じで。だから、それを大人の人でもクラシックみたいなものを。
ラグビーってすごく今回盛り上がったじゃないですか。で、ルールが分かんないんです。アメフトとどう違うのか分かんないんだけど、だけど、だんだん前落としちゃダメなんだとか、後ろにパスするってぐらいは何となく知ってたんだけど。これ入れたら何点だみたいな。

 

それって、フィギアとかもそうだけども、こうやったらこういうふうにやるんだみたいな。ルールが分かってくると、何となくそこを注意して見るようにしたりとかっていう。つまり、見るとこが分かんないんですよね。だから、何となく人の目に触れてどういうルールでクラシックってのは成り立ってんのかっていうところがアピールできると。たぶん敷居が高いつもりなんて更々ないんですよ、やってる側のほうは。

 

夏目:あー、そうなんだ。

 

高木:ほんとに。でも、敷居が高いイメージがすごくあって。

 

夏目:うん。

 

高木:それってなぜかっていうと、ある程度のルールが分からないと、もう土俵にも乗れないっていう感じが。でも実際そうなんですよね。

 

有吉:それはまったく分からないって。

 

山田:コンクール関係のルールは全然別物なので、クラシック音楽のルールっていうのは、ちょっと全然別、間違いなく別ルールなので、たぶんそれ一般の人が思ってるルールとはたぶん全然違いますけどね。

 

高木:うーん。

 

山田:ピアノじゃなくても歌えばそれで音楽なわけなので、それをピアノで表現してるだけなので、ピアノに何もルールはないんですよね。

 

高木:うーん。

 

山田:自然に感じてることをピアノを使って表現してるっていうだけなんですけどね。だから、ピアノの楽譜を弾いてるってことはパズルをたどっているっていうことなのでその先ですよね。だから何年かやらないと。

 

高木:そうなっちゃうんですよ。

 

山田:だから、先生たちも毎週毎週何か植え付けるために、生徒に何か具体的にこの曲を弾けるようにもちろんするんですけど、それには初めから2年で弾けるっていうものではないんですけどね。

 

高木:まあ、そういうことになっちゃいますね。

 

山田:子どもの身体と成長と、身体と心と耳と育っていく。

 

高木:そうはいってもフィギアスケートだったら、何回転したとか見どころみたいのあるじゃないですか。

 

山田:それはスポーツだからですよね。

 

高木:そうそう。でも、スポーツの一面より芸術点のほうが上だったリとかしますよね。

 

山田:ああ、そうですけどね。

 

高木:でも、たぶん僕たちって何回転飛ぶかのところばっかり見てて、何バウアーだとか、リズムがとか、選曲がとかってそこのルールが分かってないから。

 

山田:そうそう。だから、解説とか面白く聞けますよね。スケーティングがって言いますよね。

 

高木:そうなんですよね。

 

山田:でも、それはやった人にしか分かんないことなんだろうなと思いながら。でも、そういう技術って何の職業にもあると思うので、その職業で何か技術っていうのを知ってるって人は何となく共感できるってことありますよね、そういう基礎的な。

 

高木:うーん。

 

有吉:ごめんなさい。質問。

 

高木:はい。

 

有吉:例えば年齢によってもルールが違うような気がするんですけど、それってこのコンクールにおいて、全部の年齢層に求めるルールですか?

 

高木:なるほど。小学生の見どころと、大人とか大学生の、確かに今回分かりやすくするために評価点っていう、要は普段コンクールやると「はい、高木さん、85点」とかって点数だけ渡される。何が85点なのか。トリプルアクセルが何点だったのか、何なのかっていう、何バウアーは何点とか、それつまりいうと、そういうもんじゃないって言うんですけど、結局それをうまく言語化できてないっていうところがあって、素人に浸透してないっていうか。もっと細分化してほしい。

 

山田:なるほど。

 

高木:うん。だから、野球だったら、野球選手評価するときに、攻走守ってのあるわけですよ。イチローの攻、走、守っていうのね。イチロー選手を評価する時ってのはそういうふうに評価していくっていうのがあって、いろんなジャンルの中である程度ルール化して評価するけど、芸術ってなってくると、坂本さんは音楽性が85点ですってざっくりなんですよ。

 

坂本:それはほんと面白いなと思ってて、有吉先生もみんな違うって言って、聴いてる私たちもみんなたぶん大事にしてるものの割合がたぶん違うんですよ。曲によってもたぶん見るところ違ってくるし、見る人によっても違ってくるしっていうのが難しいところで、テクニックとか構成力だったりとか、そういうテクニカルな場面をすごく重要視するアカデミックな先生もいれば、この人の将来性がとかっていうような感じのふわっとしたこと言う人もいるし、その割合を決められない、人によって決まってないっていうのが魅力でもあり、また難しいところでもあるのかな。

 

有吉:たぶん、弾いてる人を我々が解説したらすごい面白いと思う。

 

高木:そうなんです。今回は解説付けるんです。

 

有吉:え!そうなんですか。

 

坂本:そうそう、ライブで。

 

高木:はい。当日自分の担当審査じゃない人が解説を担当してもらうっていう感じで、ライブ配信の横に別部屋で解説員付ける。

 

土屋:副音声?

 

高木:はい。副音声にするのか、弾き終わったあとに見どころだとか、この曲のポイント。まあ、ピアニストの方がどこまでその曲の見どころを言えるかどうか分からないですけど。

 

有吉:いいとは思いますけど、たぶんそれぞれ。

 

坂本:人それぞれです。それも魅力かもしれないですけどね。みんないいと思ってたところが、別の先生はそこが気になった嫌なとこだったり、ほんとにあるんですよね。

 

土屋:それは面白いですよね。それが逆にすごく魅力的なのかな。

 

坂本:見どころ全部一緒っていうふうに伝えるんじゃなくて、見どころがこんなに違う面白さがクラシック音楽にあるんだよっていうのを私は逆に伝えたい。

 

土屋:その話をこれからするんですね?

 

高木:根源には、うちの一人娘の話ばっかりになっちゃうけど、将来どうするんだみたいな話に、たぶん‟ピアノやらせてる親あるある”だと思うんですけど。これ、飯食えるのか?みたいな話とかになって。そもそもまず3人の方は音大を意識して、音大出て大学院行ったりして、海外行ったほうがいいのかなとか何とかっていって、恐らくプレーヤーと教育者って2つの大きな分かれ、というところがあると思うんで。

 

土屋:プレーヤーと?

 

高木:教育者。まあまあ、それ延長線なのかも分かりませんけども。でも、ほとんどの人がそういうピラミッドの頂点の人たち、まあこういう方々以外は、総じてもう音楽とは無縁のところに行くわけですよ。だから、そのためにはやっぱり音楽の市場、このクラシックの市場の中で、理解してくれる人たちとか、要は市場を広げていきたいっていう思いはやっぱりあって、やっぱりどうしても知らないやつを排除すみたいな、そんなつもりまったくもちろんないんですよ。ないんだけど、そうじゃなくて、そのために坂本さんなんかはテレビなんかに出てたりもしてたけど、関ジャニ∞のピアノ何とかってあるじゃないですか。そういうの出られて。でも、あれは本来クラシックとかピアノの本質的なものを争ってるところじゃなくて、超絶技巧みたいな感じのところを争ってるって。つまり4回転半を飛ばすっていうだけにすぎないっていう。だけに過ぎないって失礼だけど。

 

坂本:音楽の本質はまったく。

 

高木:そうそう。そうじゃない

 

坂本:まったく関係のないお祭りみたいなものですね。

 

高木:そうそう。比較できないと人って楽しめないし応援できないっていうか。私の音楽性で何かを楽しむっていうほどの知識持ってないから。だからある程度比較させないと人ってスポーツみたいな感じで応援できない。じゃあ、比較の材料って何かっていったら、基準を明確にすることなんじゃないかなって。そうすると、また関ジャニ∞のみたいになっていったりするんですけど。

 

坂本:それはそれでナンセンスなんですけどね。

 

高木:そうそう。だからそこのちょっと。先ほどの小学生の基準とやっぱり大人の基準っていうのはどんどん音楽性ってとこあって、恐らく小学生の低学年は生活みたいなものだとか、曲の理解みたいなところが重視されるところが多くて、恐らく高校性ぐらいになってくると、自分の自発性だとか。

 

山田:まあ、初めからですけどね。

 

高木:そうなんですね。そういうアレンジとか自分らしさみたいなものを出していくっていうとこが必要なのかなと思うので、何かこう、ひとつのこう。

 

土屋:市場が広がるような何か。

 

高木:そうそう。その中にはオンラインも活用してっていう。

 

山田:難しいね。

 

有吉:難しい。

 

高木:今回、WebサイトのほうではYouTuberみたいな人っていらっしゃるじゃないですか。

 

坂本:ええ、ええ。

 

高木:そうそう。で、YouTuberって見方しちゃうとあれなんですけれども、やっぱりあれを見てレッスンしてる人たちがいるのは確かだし。

 

有吉:おお!

 

高木:そうなんですよ。

 

坂本:おおって思いますよね。

 

有吉:おお!ダメです!笑

 

高木:でも、理論的なものだけでもそうだし。

 

土屋:同じ子がYouTuberをやってる?

 

坂本:結構いらっしゃるんです。YouTuberピアニストみたいな、最近。

 

夏目:ねえ。ピアノ系YouTuberってジャンルがひとつ出来上がってますよね。

 

有吉:でも、あの関西の子は面白いと思った。

 

坂本:赤星さん。寸劇みたいな。

 

有吉:そうそう。正攻法で私弾けますみたいな人は面白くないですよね。

 

高木:ああ。そうですね。でも入口だし、いろんなポジティブにボタンとか後押しするとか。レッスンしたりとか、自分が弾けます、それこそ街角でピアノ何とかでも。それが本質かどうかは置いといても、やっぱりオンラインだとか動画を見て、クラシックを楽しむ文化っていうのは出来つつあって、それは否定しててもしょうがないっていうか、それをどう自分たちのあれと組み合わせていきながら、やっぱり市場が広がってくっていうところにいけるといいなって。皆さんオンラインレッスンに葛藤してて、なかなか難しいねみたいな。これ終ったら終わりだよねオンライン、っていうわけじゃたぶんなくて、僕の話ばっかりになっちゃった。すいません。

 

坂本:高木さんも反対に入っていただいて。

 

高木:いやいいです。すいません。

 

土屋:やりますか。

 

(会場移動)

 

夏目:皆さんは、コンサートとかご一緒することとかあるんですか?

 

山田:そうですね。

 

有吉:一緒だったよね、こないだも。

 

坂本:あと、大阪で一緒で。

 

有吉:そう。一緒で。

 

坂本:なんか緊張しますね。

 

山田:さっきあんなに雄弁にしゃべってたのに。

 

土屋:してないです。緊張してないです。なんかね、カメラがあると緊張してるって言いたくなるだけで。なんか人って緊張しますねって言いたくなっちゃう。よーく考えてみると緊張してないんです。

 

山田:さすが。

 

坂本:さすが。

 

土屋:緊張ってのはこんなもんじゃないですから。

 

山田:はい。

 

坂本:はい。

 

土屋:本当に緊張すると、人はガタガタ震えます。

 

一同:(笑)

 

土屋:そういうところまで追い込んで番組つくっていきますから。

 

一同:(笑)

 

土屋:放送ぐらいは緊張してないって言って大丈夫。

 

山田:テレビの底力ですかね。

 

土屋:本当に緊張すると、もう真っ白になる状態を緊張といいますけど。

 

山田:マユミさんは絶対緊張してない。修羅場を踏んでいる。

 

坂本:そんなことない。

 

有吉:ちなみになんか知ってんの?みたいな。

 

山田:いやいや。関ジャニ出てたら修羅場でしょ

 

坂本:(笑)

 

夏目:コンサートとかで演奏する前とかも緊張したりするんですか?

 

坂本:します、します。

 

土屋:でも、したほうがいいってこともあるでしょ?

 

有吉:そうですね。

 

土屋:ねえ。

 

坂本:不思議ですね。

 

土屋:そこのコントロールとか、いい具合の緊張みたいな。

 

山田:緊張しなくて困っちゃうっていう人よりはやっぱり豊かだと思いますよね。

 

土屋:ああ、そうですよね。そういう意味での脳内物質の適度な出し方みたいな、たぶんありますよね。スポーツ選手なんかも絶対ありますもんね。

 

坂本:そのためにローテーションを…

 

土屋:100メートルの世界をね、あれなんてこのコントロール次第みたいな…

 

坂本:一瞬ですもんね。

 

土屋:マラソンは長い時間の勝負だから。だんだん自分をなんていうか…

 

坂本:そういう意味では演奏もちょっと似てるとこありますよね?

 

山田:うん。

 

坂本:5分、10分ぐらいの曲に何百、何千時間…

 

山田:ピアノは音いっぱいあるからね。

 

土屋:でも、最初の一音というかは、やっぱり一番?そうでもないですか。それとも全体でいく感じなんですか。一音にあんまりクローズアップされない?

 

山田:いや、人による。私最初がいい、いや、自分でいいと思ってるだけかもしれない。

 

坂本:私は分かる気がする。

 

山田:お客さんのほうは最後が良かったって言うんだけど、本人は最初が完ぺきなの。

 

一同:(笑)

 

山田:でも、そっから崩れていったりするほうが面白いみたい。

 

一同:(笑)

 

高木:もう大丈夫ですか?

 

♪♪♪♪♪

 

そして、本番へ。

 

(了)